理科大好き倶楽部って
イベント情報
みんなのアイデア募集中
過去の実験
ご意見・お問い合わせ
りんく


群馬県 伏島 均

1.はじめに

「動物の種類やその生活についての認識を深める」学習においては、直接、動物を観察することが一番望ましい。しかし、それができない場合は、画像などの資料から察するしかない。教科書や資料集の写真だけでは不十分な場合、ビデオが利用できるが目的にあったものがない場合がある。
生徒に即時に提示でき、何度でも個々の必要性に応じて見ることができる「動画コンテンツ」を作成し、生徒の学習に活用できるようにした。


2.研究のねらい

動物の観察において、直接観察が難しい動物や特徴に着目してほしい動物をコンピュータで見られる「動画コンテンツ」で作成し、生徒自身で分類の観点や動物の特徴などを発見できるようにする。

3.研究の方法と内容

(1) 動物教材における動画の意義
動物教材では、実物の観察が一番望ましい。しかし、身近な動物の観察では可能であるが、例えば、分類上例に出される原始的哺乳類のカモノハシは、教室で実物の観察は不可能である。そこで、文章による説明、写真、そして写真だけではわからない特徴や生態を推し量ることができるのが動画である。カモノハシを例にとれば、「口はかものくちばしのよう。卵をうむが、授乳し、体毛がある。」といった説明だけでは想像がなかなかつかない。写真があれば明確になるが、さて、どのような動きをするのか、どんな生態なのかを知るには、動画による提示が必要となる。まさに百聞は一見に如かずである。
(2) メディアの動画コンテンツの特徴とメリット
・ディメリット
動画資料には、ビデオ(市販品やテレビ放送番組を録画したもの)や DVD、市販マルチメディア図鑑等のCD-ROMの中のムービー、インターネット上で公開されているものがある。しかし、教師が意図しようとする内容に合致しない場合は、自作動画コンテンツを作成する必要が出てくる。
自作動画コンテンツであれば、家や学校、地域の身近な動物についての動画を作成できる。また、「オウム貝の動きを観察させたいので、噴水口から水を出して反対に進む映像を作りたい」などの目的にあったものを作成できる。更に、デジタルビデオ編集により映像タイトルやロール式のコメントも入れることができ、生徒の興味関心を惹きやすい教材作成ができる。パソコン上で生徒の要求に合わせて何度でも繰り返し見ることが可能である。じっくり見たい場面は、一時停止で静止画像にすることもできる。これらの自作動画コンテンツは、自校だけでなく、インターネットで発信し情報を共有化することもでる。
(3) 自作動画コンテンツの作成の手順
パソコン環境や使用ソフトにより違いはあるが、おおかたの流れは、以下のようである。
1.デジタルビデオムービーまたは動画撮影できるデジカメで動画素材を撮影する。
2.パソコンのハードディスク(通常Dドライブ)に取り組む。AVIファイルとして保存される。
3.ハードディスクに保存されたAVIファイルを、WindowsME以上に標準のソフトムービーメーカーで編集する。ナレーションを簡単に入れることができる。その後、拡張子WMVファイルで保存する。本ソフトは、WindowsXPではより簡単に操作性もよくなり、タイトルや説明を効果的に入れられるようになっている。 4.Windows Media Playerで動画を見る。
(4) 授業で使用した自作動物動画コンテンツ
【第1時】ツバメ・ヤマアカガエル・ウグイス・カダヤシ・ウォンバット
【第2時】アホロートル・イワナ・バイソン・クロキツネザル・プレーリードッグ・カメレオン・ダチョウ・エミュー・カソワリ
【第3時】アブラコウモリ・アオダイショウ・ホシガメ・オウム貝・カモノハシ・マツカサトカゲ・タツノオトシゴ

(5) 【準備】HTML形式で1つの動物について3問ずつ問題を作成し、動画コンテンツをリンクさせたものをインストールしたパソコンを班に1台ずつ用意した。また、各パソコンからは無線LANでインターネットにつながり、検索可能な環境にして授業を行った。

○「追究動物クイズ」に取り組む方法について確認する。
○動画コンテンツとインターネット検索等を利用して、「追究動物クイズ」の課題に取り組む。
○班で割当たられた1つの動物について、じっくりと調べ、その他の動物についても、分類や特徴について考える。
○各班1つずつ割り当てられた動物について、調べた結果を発表する。(約2分ずつ)
○「初めて知ったことや学んだこと」「もっと知りたくなったことや疑問など」を個人学習カードに記入する。


4.実践の成果と課題

自分たちにとって未知の動物の動画を何度も見たり、手がかりをもとにインターネットの検索をしたりして、名前や特徴、仲間分けについて考えることができた。当初は1時間の予定で教材を作成したが、「また動物クイズをやりたい」という生徒の要望で、3時間分の教材を製作した。教室という限られた場所では追究に限界があった内容も、動画というデジタル映像により、自分にとって未知な動物がどのグループに入るか推論でき、自然界には多様な動物が生活していることに気づき、動物愛護や保全の態度を養うことができた。また、動画から、その動物の特徴をじっくりと観察したり、検索エンジンや図鑑で調べたり、「自分からなぞを追究しているようでいい」「自分では実際に見られない動物まで、見ているような感じて調べられて良かった」など、効果を示す反応が出た。単元の導入では、野メダカ、イシガメ、タイリクバラタナゴ、アホロートルの実物の観察をしたことを付記する。