理科大好き倶楽部って
イベント情報
みんなのアイデア募集中
過去の実験
ご意見・お問い合わせ
りんく


神奈川県 滝澤慎一郎先生

第4学年では、子どもたちが自然とふれあう機会が少ないという実態から理科の学習で「春見つけ」をしに校庭に出かけた際、校庭の動植物の名前や数を調べた。また、その姿を虫眼鏡など使って詳しく観察し、スケッチした。さらに、自然をより身近に感じられるようにするために総合的な学習の時間にネイチャーゲーム等を設定した。子どもたちは「この赤色は、あの花びらの色だ。」「この黄色は、あの花の色とは少し違うぞ。」「こんな色の草があったんだ。」など、以前より詳しく動植物を見つめるようになった。子どもたちの動植物に対する興味が高まってきた段階で、「わたしの木を調べよう」という活動名をつけ、一人ひとりが1年間かけて継続観察していく木を決定した。 本校では平成元年度より、コンピュータの活用を学年間の系統性を考慮して学校カリキュラムに位置づけている。「触れる → 慣れる → 使う」と段階を経てコンピュータの計画的な活用を実践している。第4学年では「コンピュータにローマ字で入力しよう」「わたしの木を調べよう」「学習発表会をしよう」を柱に計65時間設定した。ローマ字入力にも慣れてきた子どもたちは、文章を作ることだけではなく、デジタルカメラの画像をコンピュータに取り込み簡単なアルバムを作るようになった。アルバムを1ページ作るには複数の操作が必要だったが、回数を重ねる毎に操作手順や要領を覚えていった。夏休み明けの理科の学習「末長の四季アルバム −夏− のページを作ろう」では、多くの子どもたちが、スムーズに作業が進められるまでになった。

観察の取り組みについて

理科学習で観察は「見る」だけではなく、「触る」・「匂いをかぐ」・「音を聞く」など諸感覚を通して情報を得ることも有効な観察方法の一つであると考えた。
5月の初めには、新芽の柔らかさや新緑特有の匂いを多くの子どもが発見し、季節感を得ていた。夏には、学級園で栽培していたヘチマ・ヒョウタンの観察中に、葉の色や大きさの違いだけではなく、手触りによって葉のかたさや厚さも違うことに気づき大きな驚きを覚えていた。
観察を通して「動植物の成長が気温と関係している」ことに気づけるように、季節ごとに気温を測ったり、移りかわる様子をスケッチしたりしてきた。また、定期的に「わたしの木」をデジタルカメラで定点観察(撮影)したり、子ども自身が気に入った部分の観察(撮影)をしたりした。それらの画像を使って、子どもの考えた方法で季節ごとにページ作りをした。子どもたちが季節のページを作る際に使う画像を選ぶ作業では、今まで観察していて気づかなかった事にも新たに気づく機会となり、自分の観察を見つめ直すことにもつながった。植物の姿を1年間通して日付順にデジタルカメラの画像として並べるのではなく、春・夏・秋・冬、それぞれのページに諸感覚を通して得た情報を書き加えながら作り上げるようにした。
さらに、対象と決定した植物だけを観察するのではなく、周囲に育つ他の植物や活動している昆虫も観察の対象とした。自然という枠組みの中ではいろいろな動植物が共存しており、季節ごとに様々な姿を見せてくれていることに気づかせたいと考えた。





総合的な学習の時間の利用

季節ごとに様々な動植物を見つけた子どもたちは、それらの名前を調べることに始まり、生態についても図鑑やインターネットを使って調べた。また、子どもそれぞれが目にした動植物や調べたい事柄も異なることから、調べる時間や調べた事柄を情報交換する時間(発表会)を総合的な学習時間で取り扱った。子どもたちは自分で練り上げた学習問題を自分の考えで解決していくことで、学習の意欲が持続し、調べた事柄に関連した知識についての理解度も大変深いものとなった。子どもたち自らが学習問題を解決していく学習形態を可能とするためにも、総合的な学習の時間と各教科の兼ね合いを考慮して計画的に進めていなければ教育的効果も半減してしまったであろう。
コンピュータを使ったアルバム作りの成果としては、理科の学習で季節ごとの特徴を考える際に、友だちの作ったアルバムを見合いながら考えることもできた。いつでも自由に友だちの作品を見合うことが出来るので、子どもたちは、自分の観察に足りなかった視点やまとめ方に気づき、その後の観察の際に新たな視点を与える手だてとなり、より詳しく観察しまとめることへとつながった。また、観察に出かける前のわずかな時間であっても観察の視点を確認することができることも、子どもには受け入れやすかったのであろう。詳しく観察する楽しさに気づいたことで、次々に発見や驚きが得られ、動植物や自然に対する親しみが増していく様子が感じられた。
 最後に理科の学習において、観察は自然を感じとる上で大変重要であり、より詳しく観察することで子どもたちに数多くの驚きや発見をもたらす。子どもたちに観察の大切さや面白さを体感させる学習形態を考えた上で今回の取り組み方も一つの方法だと考えて、継続実践している。